先日のエントリで、
・日本はやることを決める時はおとなしくして軍隊のようだが、実行段階に
なって(上からの指示に反して)動かないことが意外と多い。
やっているふりをして成果を上がらなくして、そのプロジェクトが立ち消えに
なるのを待っている。
と書いて、面従腹背だと否定的に書きましたが、組織論の本によるとこういった「やりすごし」行動も立派な組織的機能と考える研究もあるようですね。
それが「ゴミ箱モデル」の「やり過ごしによる決定」というものです。
ゴミ箱モデル、とは組織的意思決定状況を説明する分析モデルで1972年に提唱されたそうです。
このモデルによると、組織的に意思決定する対象としての選択機会をゴミ箱に喩えて、参加者はそのゴミ箱の中に問題だったり、解答だったり、自分が気がついたり作り出したものを入れていきます。
そしてそのゴミ箱の中に問題解決に必要な量のエネルギーがたまったときに、そのゴミ箱(=選択機会)が組織的な意思決定(「それに取り組む」と決める)となる、というものです。
(参考
「超企業・組織論」高橋信夫 著)
このモデルでの意思決定パターンには、
(1)問題解決による決定
(ちゃんと、投入された問題に対して解を出して実行する)
(2)見過ごしによる決定
(問題がちゃんと投入されないうちに解を出してしまって実行する)
(3)やり過ごしによる決定
(問題をやり過ごしているうちに問題自体がなくなる)
の3種があり(詳細は割愛します)、コンピュータ・シミュレーションをしてみると、あいまいな状況下では(2)の見過ごしや、(3)のやり過ごしによる決定が通常の決定スタイルになるとわかったそうです。
しかも面白いのは、仕方なく(3)のやり過ごしパターンになるということだけではなく、
・人材の育成の機能
(上司の指示を忠実にやっていれば良いかと言えばそうではない。
自分自身で優先度をつける必要があり、その力量をチェックするのに使う。)
・選別の機能
(巨大な問題の解決に組織中からエネルギーをかき集めると、他の選択機会
に対応できなくなる。そのような問題をやり過ごすことで最低限の決定を保証)
という考え方があり、前者の人材育成については実際のケースも報告されているということです。
どういう意図を持ってやり過ごしているかで大分内容は異なる気がしますが、日本組織においては主体的にこのやり過ごし(※)をしているとしたら、ミドルが強い裏付けになるような気がします。
(※)1990年代の日本企業の調査によると、「指示が出されてもやり過ごしているうちに立ち消えになることがある」と応えたホワイトカラーの比率は53.4%だそうです。これは高いと見るか低いと見るか。マネージャー側から見たら心穏やかでない結果だと思いますが、感覚的にはもっと高くても不思議でないような。