企業の境界に関してもう1つ別の視点から書いてみたいと思います。
オープンイノベーションにもカラムのですが、どこまで自分の会社でやろうとするのか、という話があります。
特に大企業においてすべて自前でやろうとして(自前主義)、かえってうまく行かなかった、という事例をイノベーションに関する授業でも見聞きします。オープンイノベーションというのは、従来日本では大企業内で全て自前でやってきたR&Dの境界を外部にまで広げた例なのだと思います。
先に書いた、渡部さんのプレゼンによる海外でのオープンイノベーションの事例が、日本で言っているオープンイノベーションと比較してドラスティックに思えるのは、海外の事例では自社の戦略について外部からオープンに意見を求めたり、自社で販売するソフトウェアのコアの部分自体をオープンに競わせたり、自らの資産を進んで開放したり、というように、企業活動のかなり根幹部分までオープン化をしているからと思います。
このことについて、海外の企業は自社の強み弱みをしっかり認識してメリハリがあることに要因があるのではないか、と言っているパネリストがいました。
ざっくり、どういうことかというと、本当に強いところはオープンにしても他者は真似できないので問題がなく、また弱いところはどうせ自分だけでやっていてもダメだとこれもまたオープンに協力するモチベーションになる、ということです。
これがなく、どの分野もそれなりに、横並び的にやっていると、オープンにすることは他社が容易に真似して、何もメリットがない、という発想になりがちだ、というのです。
これはあるのかもしれません。
そもそも自前主義だったので、たいていの事は満遍なく自社で取り組んでおり、それをみすみす開放するのはとんでもない、というわけですね。
ただ、今うまくいっていない原因を過去の選択に帰着させて犯人扱いしても仕方がないので、未来のことを考えなくてはいけません。
変化の激しい現代、オープンイノベーションは避けて通れない道なのかもしれません。ただ、アメリカ式のオープンイノベーションはそのまま日本に持ってきてうまく行くのでしょうか?
パネルディスカッションでは、日本人のコミュニケーション力不足の話題で話が広がりました。コミュニケーション力不足(単なる語学力のことでない)については、最近大前研一氏も口を酸っぱくするように指摘しています。