本日は3月の最終週末。既に実態は会社の業務に復帰しているものの、来週からは4月が始まり、名実ともに2年間に亘った大学院での留学生活が終わることに少し感慨深いものがあります。きっと今しか書けないこともあると思うので、総括をしてみたいと思います。
タイトルは「技術経営とは」としましたが、改めて学問を定義づけようと言う訳ではありません。学問的にはこの定義づけは重要で、いろいろな定義づけがされていますが、「経営とは」という問いと同様、おそらく一通りの正解はなく、しかもそもそも経営がScienceかどうかの議論がある現段階で、この問題に深く立ち入ることは私の注力したいところではありません。
「技術経営とは」という問いには、各自が一人称で語れる思いがあることが重要なのではないでしょうか。一般的な用語解説としては
wikipediaの項目で十分と思います。
さて、言い訳がましく始めてしまいましたが、このエントリでは自分にとっての技術経営を学んだ2年間は何だったのかを、簡単にそしてあくまで一人称で(自分にとっての意味、コンテキストにおいて)振り返りたいと思います。
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技術経営とは何か、と聞かれたら私がしっくりきている2通りの説明をしようと考えています。それは、
・”技術をコアにする企業のマネージメント” (Shenhar et al.)
・”経営学”+”イノベーション”
の2つです。これで製造業である私の勤務先企業が、今学ぶことの必要性を説明できると考えています。
”技術をコアに”ということはR&Dを行う製造業などに限られるのか、というとそうは思っていません。私の中での”技術”の定義は、
”モノやコトを実現するために必要な知識(原理)とその運用手段・能力”
であり、自然科学の分野に限らず、金融や社会システムの議論の範囲内だと考えています。
もう1つ補足をすると、ここでの”イノベーション”の意味合いは、
”従来のモデルを大きく変えることで、今まで無かった社会的(経済的)価値がもたらされること”
としています。
社会的(経済的)価値まで考えるころはイノベーションの定義として一般的ではありますが、モデルチェンジのところは人によっては異論がある部分です。実際、”インクリメンタル・イノベーション”なる改善活動をイノベーションと捉える類型化もあります。
流行言葉となったため、今や猫も杓子も”イノベーション”の大合唱ですが、今の時代に求められているのは、モデルチェンジ、すなわち、「成長(同型モデルの規模拡大)」だけでは捉えられないビジネス環境の変化を目指しているのだと思います。
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それではこのような”技術経営”を勉強しに行って、一体何を得てきたのでしょうか。
これは月並みですが、
技術を用いたビジネスを対象とした「仮説構築・検証能力」
と、人脈だったと思います。
東大TMIのカリキュラムは、
1.技術開発学
2.経営科学
3.知的財産経営学
の3本柱となっているのですが、このそれぞれの科目群で重点の置かれるポイントは異なるものの、技術を持った企業が、ある環境下においてどのようにビジネスを進めて行くべきか、という問いについて仮説を立て、様々な角度から検証を進めるというプロセスと言う点では共通していたと思います。
例えば、1.技術開発学の中の講義「技術ロードマッピング」では、目標の明確化・共有を目的とした技術ロードマップというツールを事例をもとに習得したのち、企業を選択して分析を行い、将来の
ロードマップを作成してその企業の経営企画やトップマネジメント層の前で発表してフィードバックを受けるというものでした。
途中の段階で発表を数回行い、その度にフィードバックを受けてより良いものに改善していきました。
2.経営科学の中の講義「俯瞰経営学」では1学期間に渡り選択した企業について、財務や新規事業、M&Aといった毎週異なる観点からの分析および提言をし、最後はそれらすべての観点を考慮して(これが俯瞰経営学なる所以だと思いますが)
業績改善策の立案、というものでした。
3.知的財産経営学の中の「知的財産とイノベーション」では、半導体製造装置を例に、「日本と各国で特許を取得して製造した製品」について、「競合B社が類似製品を製造して販売している(販売にはC社が日本の代理店となっている)」ケースを元に、自分が知財部長だとして、取締役会で説明する文書を作る、と言った
課題に取り組んだりしました。
1つ目はCTO的、2つ目はCEOもしくはコンサル的、3つ目はIPマネージャー、と設定されたポジションや課題のレベル感は異なりますが、それぞれのポジションにおいて自分たちの持つ”技術”をどうやってビジネスに活かすか、という仮説立案と検証という点では共通していたと思います。
人脈についてはとても優秀な同期に恵まれましたが、学科全体で20数人、社会人経験者5人という学科の中だけでは十分ではありませんでした。(もっともこれは、どこの学校に行ったとしても、学校のカリキュラムに参加するだけで人脈が十分などということはあり得ないと思います)
そこで外部に対していろいろ顔を出し、手を広げるようにしました。近いところでは同じ授業を取っていた博士課程の方、社会人同期の同僚の方、自分の(一つ前の)学生時代の友人、などを集めて勉強会を開催したり、基本的に博士課程対象の
Stanford GBS学生との交流会にスタッフとして携わったり、種々のセミナーに参加しました。
また東大正門前で行われている早朝勉強会(
「三文会」)に参加し、発表をしたり、そこで知り合った人の伝手でベンチャー経営者たちとの勉強会(情報交換会?)を始めたりといったこともしていました。
外部の人脈の話から書いてしまいましたが、最も濃い時間を過ごしたのはもちろん学科の同期です。彼らの何人かとはともにグループワークで苦しみ、一緒に1週間ちょっとのシリコンバレー研修に行き、修論に取り組んだ、とても充実した、いい思い出ができました。
これらの人脈はこれからも大切に育んで行きたいと考えています。
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最後に、この学びの期間を終えた自分は得たものをどう活かすのか。自分が力を発揮していきたいのは次の2点です。
・ゲートキーパーとして広く外界からの情報収集、翻訳、編集
・モノ・サービス・ビジネスのデザイン
第一期学生時代に機械系、物理系を学び、仕事ではIT系を、それに加えて今回の第二期学生時代において経営やイノベーションといったところを吸収してきて、自分の強みはmultidisciplinaryな面だと考えています。
そしてそれら多方向からの情報を俯瞰的に見て編集し、具体的形にデザインする。これをやりたいですね。そしてそのような職務に携わるために自分自身をどう買ってもらうか、というところから戦略的に動きたいです。
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2007年の12月から始めたこのブログですが、このエントリがちょうど300記事目です。
中川翔子さんのしょこたん☆ブログにしてみたら
1日で100件ブログ更新するらしいですから件数自体は決して多くないですが、この1年3ヶ月余りの間にのべ8,000人以上の人に訪れて頂きました。つたないブログでしたがこれまで読んで頂きありがとうございました。切りの良いこの300エントリ目でひとまずブログ終了としたいと思います。
ブログを書くためには物事を見聞きしただけではダメで、それについてどう思うかが必要なので、大変でしたが良い訓練になりました。また適当なことを書くわけにはいかない(と自分で決めていた)ので、何か引用したり前提となる状況を書く際には極力一次データを見て確認する癖もつきました。
それから何より自分のエントリに反応がある時はうれしかったです。特にこれまで全く面識がなかった方とのつながりができると、うれしいとともにブログの威力に驚かされました。せっかくこのような便利で強力なツールがあるわけなので、これからも何らかの形で発信を続けていけたらと考えています。
最後まで読んでくださってありがとうございました。また、どこかでお会いしましょう。
2009年3月29日 神奈川県内の自宅にて akikoi27
(上の名前はgmailアドレスのローカルパートです)
今日は東大の学位授与式、平たく言えば卒業式でした。
風は強かったものの、昨日の雨は止み、いい天気。安田講堂前は入場に並ぶ学生、写真を撮る父母等であふれ返っていました。
式の様子。内容についてはまた後日加筆したいと思います。(明日より職場復帰のため)
技術経営戦略学専攻の独自の賞の最優秀成績賞をもらうことができました。うれしい。結果は44単位+修士論文、全て優。成績的には納得の出来だったと思います。
(加筆)
上の写真は最優秀成績賞授与の様子。
専攻長からは祝辞として「武士道」の例を引きつつ、ノーブレス・オブリージュの話がありました。
新渡戸稲造が、「日本には宗教教育がないがどのように道徳、倫理を教えているのか?」という問いに応える意味で著したとの位置づけで「武士道」を紹介し、これから入っていくビジネスの世界で遭遇するであろう、道徳観との葛藤を禁じ得ない出来事に対し、しっかりとした倫理観を以て対応することこそ、求められるのだ。と言う話をされました。
以前のエントリ、
「技術経営戦略学のすすめ」でも触れましたが、東大がMOTコース(TMI)を作るにあたって意識しているところはまさにこの”志”、”責任感”、”倫理感”であるわけで、そのことを改めて強調するお話でした。
このあと、懇親会まで時間に余裕があったこともあり、司会の事務の方が、
「さて、先生から祝辞をもらいましたから、誰か学生から答辞を。希望者はいませんか?」
と無茶振り。ザワザワしはじめましたが特に名乗り出る気配がないとわかると、
「では、表彰を受けた人から話をしてもらいましょう。」
と振られました(笑)。
ちなみに表彰を受けたのは、最優秀成績賞として僕の他に留学生が一人(たぶん彼もオール優だった。かつ研究発表でも賞をもらっていた)と、修士論文の採点がトップの同期が一人の計3人でした。
ということで自分も話すことになりました。
自分が話したのは、
・祝辞のノブレス・オブリージュの話は、技術経営を学ぶ場として東大を選ぶ意味付けを再確認できて良かった
・成績で賞をもらったがグループワークが主体のカリキュラムであったので、皆が頑張らないと達成できなかった
の2点の話をしました。
2点目については必ずしも順調に行ったグループワークばかりではありませんが、メンバの意識レベルが高かったものは互いに学ぶことも多く、成績も良く、良い思い出になっていると思いました。
ただ本当の評価はそれぞれが、それぞれの場でどれだけの成果を出せたかということで決まるのだと思いますし、それら個人の活躍の総計により、ようやく2期生を送り出した東大TMIの専攻としての評価も決まってくるのでしょう。自分ももちろん頑張りますが、同期の皆にもそれぞれの場所で頑張って欲しいと思います。
(加筆ここまで)
総まとめも後日書きたいと思います。あっという間の2年間でした。さて、明日から仕事!!
本日は、ミニMBA的な講義「俯瞰経営学」の教官で私の修論の副査もして頂いた、松島克守先生の最終講義でした。工学部2号館の最も大きい部屋を用いて、それなりの入りでした。もっとも、人数以上に多くの著名な方がみえていたようで、森精機の社長(論文博士の卒業生)なども来ていました。
会場では下のような、プロフィールや研究室の歴史などがまとめられた冊子が配られました。
プロフィールをみるととても沢山の分野に携わってこられたことがわかります。
生産技術の研究者からCAD/CAMの専門家としてIBMで働き、営業所長も務め、その後(現)PwCのパートナーへ。お話はなかなかきわどい話も多く、ここでは詳しく書きませんが、PwCでの頃が一番楽しそうでした。(主に待遇面。仕事面の中身面ではIBM??)
最後は花束贈呈。
講義「俯瞰経営学」についての書籍出版の構想もあるらしく、楽しみ。どこかで登場しないかな。
先日出席したSFC-IV Entrepreneurship Forumで告知されていたのですが、本日のテレビ東京の番組でマザーハウスの山口さんが取り上げられていました。
この番組でもそうでしたが、「ビジネス」×「社会貢献」のテーマを最近頻繁に見かけます。それだけ注目されてきているということなのでしょう。
ところで本日、シャプラニールから購入したフェアトレード商品が届きました。
山口さんに言わせれば、
「モノが悪くても金持ちの日本人なら買ってくれる」
であれば、本当の意味でのフェアトレードではなく、形を変えた援助。だって、フェアじゃないですから。
上のヘアゴムは400円。これは妥当なところか。
下のキーホルダーは800円。素朴でいい味が出てはいるのですが私の見立てでは600円といったところでしょうか。話のきっかけにもなるのでこのキーホルダーを使おうと思っていたのですが、想定より2周り程大きく、やめることにしました。母親にあげようかと思っています。
東大で桜が咲き始めました。
春ですねぇ。春は別れの季節。このキャンパスとももうすぐお別れです。